自分に嘘はつけないね

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自分に嘘はつけないね

 気持ちの良い朝、日曜。 世間一般がどうかは不明だが、僕は今日も元気に仕事へ向かわなければならない。  残暑厳しい九月。昨日の夜は鈴虫と蟋蟀が二重奏を響かせていたというのも相俟って、幾らか涼を感じたのだが、日中はさながら灼熱地獄。その地獄へこれから飛び込んでいかなければならないのかと思うと辟易する。せめてこの暑苦しいスーツではなく短パンタンクトップで仕事が出来たらいいのに。  気が付くと、僕は電車に揺られている。幸い日曜の朝は空いていて、流れる汗をタオルで拭いながら適当な座席に座った。  何気無く見つめた向かいの車窓から、顔を覗かせた太陽が瞳の奥を刺激する。そうやってようやく、僕は朝が来たことを認め、これが僕の日常であることを自覚し、今日も頑張るか、と。少しだけ気合いを入れるのだ。     
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