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その問いに答えよ
「これは一体どういうことですか?」
クラス全員の前で、先生は彼女のテストの答案を晒した。
教壇の前に立たされている彼女に皆の視線が集まる。
「桑崎さん。あなたの今回のテストの点数は、0点です」
先生の発言に教室中がどよめいた。
だって桑崎さんは、この学年で成績トップの生徒だったからだ。
テストの成績はいつも学年一位。100点ばかりが並ぶ成績表、試験のあとの廊下にはいつも彼女の順位がトップで張り出されていた。
その桑崎さんが、あの桑崎さんが0点だという。
そこにいる皆が、何かの間違いかと思った。
「桑崎さん。あなたは皆さんと一緒に試験を受けていましたよね? 試験日に休んだわけではない、きちんと確実にテストを受けられる環境だった。なのにこれとは、どうしてしまったんですか?」
「……」
大人しい桑崎さんは何も答えなかった。
「ああ、嘆かわしい。成績優秀者のあなたが、私の教科だけ赤点だなんて。親御さん、さぞかしがっかりするでしょうね」
若い男の先生は鼻につくような声で言う。
「今回の件で、あなたの輝かしかった内申点に大きな傷がつきますね。何故こんなことをしたのですか?」
「……」
彼女は何も答えない。
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