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二人の間にしばらく沈黙があった。今度の沈黙を破ったのはゴールドフィッシュの方だった。
「奇跡のような偶然が必要ですが、完璧につじつまがあいます。もう少し前に飲んでいればあなたの命は助からなかったということですね。では、すべてがあなたの考えた作り話だった、という可能性は?」
イグレックは顔を少し左に傾けると右側の肩にかかるほどの長髪を少しだけかきあげた。彼の側頭部には大きな瘢痕があり、耳介の上半分は欠損していた。彼はさらにセント・ジェームスのTシャツをひっぱって首を見せた。そこにも気管切開の傷跡が残っていた。
「すべてが嘘というわけではないのですよ」
「これは、すみません。信じてないわけでは…」
「いいのですよ。私自身ですら、信じられないと思うこともあるのです。しかし、ただひとつ、真偽を確かめる方法がある。お分かりですか?」
しばらく考えてゴールドフィッシュ氏は答えた。
「百年後にあなたが生きているかどうか、ですね」
「そのとおり」
二人は笑った。
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