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Merry Christmas
チカチカと明滅するイルミネーションがスーパーの入口にかかっていた。
夜の九時前。閉店間際の人の少ないその場所。空気は冷たい。そこをチカチカと。
まだ十一月が始まったばっかりなのに。つい先日までジャックオランタンが陣取っていたそこには、クリスマスツリーが鎮座していた。
私はそれを一瞥して店に入る。
ああそうか、もう次はクリスマスか、なんて思いながら。正直実感らしい実感がない。まだ一ヶ月くらい先のことだし。
トマトとジャガイモと玉葱とハムと卵と牛乳と、ええっと、それから。
週一でしか買い物には来ないから、必要なものは全部買ってしまう。娘との二人暮らしなんてそんなもの。店内を歩けば、クリスマス用のパッケージも目に付く。それがなんとなくつまらなく感じる。
「特別なことがなくちゃ生きていけないみたい」
ハロウィンが終われば、もうクリスマスだって浮足立って。イベントみたいなわかりやすい特別がないと、生きていけないみたい。日本って、そんな感じがする。商業的な戦略なのかもしれないけど、毎月なにかしらのイベントを謳っている。
「なんでもない日常が怖いみたい」
じゃあ、おまえはどうなんだよ、なんて声がする。
私?私は毎日平凡な日常。
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