第一章 トイレの花子さん

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第一章 トイレの花子さん

 学校の七不思議。その言葉は誰もが聞いたことのあるものだろう。例を挙げるとするならば、トイレの花子さんや動く人体模型といったところだろうか。普通の人ならば、こんな根も葉もない噂信じたりする者は少ないだろう。私もその一人だ。心霊現象、などというものは一切信じていない。この学校では、そういう噂が多いのだ。私のもとに一人の女が来る。 「冷夏。今日さ!いつものグループで夜の学校に肝試しに来ようと思っているんだけどさ。冷夏も来ない?」 彼女は、清水霊奈。私の大親友だ。いつものグループというのは私と霊奈を含めた八人のグループだ。 「今日はトイレの花子さんを調べてみようと思うんだ」 トイレの花子さんのやり方はとても簡単だ。手前側から三番目の扉をノックして、『花子さん、いらっしゃいますか?』と聞くだけだ。このとき一人で調べなきゃならないらしい。噂だと3階の東側のトイレに出るそうだ。 「私はいいや、今日は塾があるから」 霊奈はしょんぼりした顔をする。 「そっかぁ。じゃあ私達だけで行ってくるね」 霊奈は自分の机に戻っていく。  次の日。 「えー今日の欠席は、七人が体調不良で休むそうです」 七人…。昨日肝試しに行くと言ったグループのメンバーだ。まさか… 「あ、あと最近“3階の東側のトイレ”で人が行方不明になった」 『噂だと3階の東側のトイレに出るそうだ』 「みんなは近づかないように」 私はあることが引っかかった。やはり学校の七不思議は存在するのだろうか。いやそんなはずない。今日実際に調べて証明してやろう。私は霊奈の机を見て、授業の準備に移った。 (どこ行っちゃったのよ。霊奈) キーンコーンカーンコーン… 終わりを告げるチャイムが教室内を反響する。各々が駐輪場やバス停に向かう。そんな中誰もいないはずの教室に人影があった。それは冷夏だ。 (まずは先生が居なくなるまで待たなきゃいけない。それに適している場所は… 図書室か) 図書室なら「勉強をしていた」という言い訳で先生を回避できる。私はノートと鉛筆を持って、図書室に向かった。
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