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「はぁー…」右肘を机につけ、ため息をつく。
(昨日のあれは何だったんだろう…)
出てきた手は色白で指先の方は少し赤くなっていた、気がする。誰かがイタズラでもしていたのだろうか。でも、だとしたら声の聞こえない楓華や急に消えた花子さんらしき人はどうやって説明するというのだろうか。よし!私は決心した。もう一度あのトイレに行って、調べてみようと。その時トイレに引きずられていった楓華を思い出した。
「あ…あぁ…」その声に先生が反応する。
「どうした岡野?具合悪いなら保健室に行くか?」
「い、いえ。大丈夫です」
何事もなかったように授業が再開した。
「どうしたんですか?岡野冷夏さん」女の子が話しかけてきた。彼女は、君島朱里。学校の近くにある成城神社の巫女だ。彼女ならトイレの花子さんとかを信じているだろう。
「相談したい事があるんだ。昼休み図書室に来てくれない」
「分かった」そう言って朱里は教室から出ていった。
彼女とはそんなに話した事はないのに一体どういった感情の変化があったのだろうか?それとも彼女が学級委員長だから心配してくれただけなのだろうか?私は次の授業の準備を始める。
「なるほど?」
私達は今、図書室にいる。とりあえず昨日の諸々を全て朱里に話し終えたところだ。
「で、今日私も実際にやってみようと思うんだけど」そう言うと朱里は顔を険しくする。
「それは止めたほうがいいと思うな」
「なんで?」
「あなたの見た楓華さんはね。多分亡霊だと思うの。声も聞こえないし話しかけても反応しない。まるで自分がいないようだといってたよね」
「うん」私もその言葉から大体のことは察した「そうだよ」
「つまりそれって、図書室から3階東側のトイレに行くまでの楓華さんが辿った道のりだと思うんだ」
「やっぱり…そうなんだ」私は少し怖くなった「で、でも…やっぱり私はやってみようと思う」
「君がそう言うなら私は止めないけど…ちょっとついてきてくれない」
「えっ?分かった…」朱里は周りを気にしながら図書室から出て東側の階段まで行く。
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