第三章 幽霊達の協奏曲 後編

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「ふぅーー」もはや当たり前になっている学校への不法侵入。実際現在学校閉鎖中の先生が一人もいない学校の教室にいる。誰も先生が見回りに来ないのだ。私は自分の椅子に腰掛ける。そして机の中から取り出した本を開く。タイトルはBOOKカバーのせいで忘れてしまったが、ベタベタなラブストーリーだ。別に恋愛小説が好きなわけじゃない。ただしこの小説は特別なのだ。小さい頃からの思い出の品で、もう何十周読んだか分からないぐらいに読み、だいぶボロボロになってきた。数ページほど読んだあと、私は自分の異変に気づいた。少し体が熱い。本を閉じて自分のおでこを触る。かなりの高温だ。最近疲れてしまっているようだ。私は立ち上がってフラフラした足取りで昇降口に向かう。教室を出たすると足の力がスルスルと抜けていってしまった。そして床に跪いてしまった。体の熱がどんどん上がっていくのが感じ取れた。まるで死ぬんじゃないかと思えるほどに体の 自由がきかない。握りこぶしを作って立ち上がろうとするが立ち上がれない。すると前に人の気配がした。私は防衛本能のおかげで残っていた僅かな体力を使って後ろに飛んだ。目の前にいたのは私と同じぐらいの女子だった。私は霞む視線を一点に集中させて彼女を見る。それは行方不明になった人のうちの一人、葉月奏音だ。私はとりあえず話しかけてみた。 「奏音!どこ行ってたの?」返事はない。聞こえていないのか?それとも私の幻覚。彼女は教室の中に入っていく。そして自分の席に座る。私はそれを彼女の後ろで見ていた。紙を取り出し何かを書く。なんと書いているのかは分からなかった。数分後、彼女は立ち上がって、教室の隅に行く。すると彼女の手から紙が消えてしまった。彼女は教室から出ていく。私は追いかけようとした。その時だった。
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