第三章 幽霊達の協奏曲 後編

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キーンコーンカーンコーン… 「チャイム!?」先生の切り忘れだろうか。でも、だとしてもこの時間にチャイムはならない。二人を見ると困惑した様子はない。肝が座っているのか?それとも、これの元凶を知っているからなのか?しかし相手は朱里に深く思考する余裕を与えない。 『ジジ…えーこれから…デスゲームを…開始します』デスゲーム。やはりあの程度では終わっていなかった。むしろ偵察に過ぎなかったのだ。そして朱里は最悪の事として、冷夏がまだ学校に残っているかもと考えた。二人には人間じゃないのでは?という意見を提示されたが、やはり彼女は生物学的に人間と分類されて、この社会で居場所を得ている。そんな彼女を化物と見るのは些か抵抗を感じてしまう。それになぜかとても嫌な予感がする。彼女には世界最強ともいえるポテンシャルがある。でも使いこなせなければただのおかしな人で終わってしまう。つまり能力的には化物じみていてもいつもは人間なのだ。私は二人を後にして居るかも分からない冷夏を探し始めた。 私は今最悪の状況下に立っている。教室に来てみたのは良いものの彼女は重度の高熱で、動くことすらもままならなかった。そして今、煙の何かのような者と対峙している。 (冷気を感じる。あの先生と同じ感じか)私は背中で隠すように除霊札を取り出す。だけど目の前の男はそれに気づいているようだ。 「私達は殺し合いなんてするつもりはないですよ。殺し合ってもらうことはあっても…」殺し合う。テスゲームではありふれた事だ。捕まった者同士が長くおかしな空間にいる事による過度なストレスによって殺し合いをすることはあるが…残念ながらこの勝負に挑むのは親友同士だ。そう簡単に裏切ることなんてない。そう意気込んだ。でも彼には私の考えが全て見透かされているようだった。 「ゲームの内容は簡単。まずはこの教室から逃げ出してみてください。制限時間は十分です。頑張ってください」制限時間というのはとても人を焦らせる。もし部屋から出るのに24時間の制限時間がつくだけでもまともな判断ができなくなる。制限時間が近づけば尚更だ。私はまず扉、窓が開かないことを確認する。そして扉の術式を調べ始める。冷夏は立ち上がって教室の隅の方を探索している。
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