第一章 トイレの花子さん

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「ねぇもしかして…」朱里は階段を登っていき3階の東側のトイレまでやってきた。そしてトイレの中で何かを唱え始めた。 「………、………………、……、………」なんと言っているのかまでは聞き取れなかったが、なんかお葬式とかで聞いたことある感じだった。 「やっぱり何かいるみたいね」唱え終わり、朱里はさ っきまで放っていたオーラの様なものは消えていた。 「というと?」 「ここには高濃度の霊気が漂っているの。只者ではないわ。想像のつかない怨念があったのだろうね」 そういえばトイレの花子さんの言い伝えは土地によって異なるんだったな。 「それで、どうするの?今日、トイレの花子さんやる気?」 「もちろん。怖いけど、楓華を助けられる可能性があるなら」 「そう、じゃあ頑張ってね」ありがとう。そう言われ私は朱里と別れ、2階に降りた。 現在時刻は午後6時。昨日楓華が現れた時間だ。一体あれは何を伝えたかったのか。私は決心し、本を閉じて立つ。そして様々な感情が葛藤しているうちに、いつの間にか3階の東側のトイレについていた。今の季節は夏。なのに今年の夏は少し冷たい。寒気だろうか。私はトイレに入って、まず水で顔をバシャッと洗った。そして一つ目の扉の前に立って三回ノックをする。 「花子さんいらっしゃいますか?」 もちろん何も聞こえない…。二つ目の扉の前で同じことをする。何も聞こえない。そして三つ目の扉。三回ノックをして例の言葉を放つ。 「…花子さん、いらっしゃいますか?」 「はい…」 !?。瞬間冷や汗がドバっと流れた。微かに聞こえた弱々しい声。その言葉は心に深く染み込み、感覚や感情、思考といったそれらを全て恐怖で支配した。私は恐る恐る扉を開ける。その中には色白の肌に、所々ドラマでしか見たことのない血のようなものが飛び散っている。私は全速力で逃げ出した。その逃げる先は図書室だった。あそこは私の知っている中では唯一中側から鍵のかけられる部屋だった。しかし、2階の廊下を走っているとき、追いつかれてしまった。手首が掴まれる。私は必死になって振りほどこうとしたが、一向に離れそうになく。少しずつ引っ張られていった。 (あぁ…死ぬのか…) その時。
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