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嘘吐きジョンはいつも真っ白なコートを着ていた。
彼はその生涯で、真実を口にしたことはほとんどない。
翻すそのコートの裾を指さして、皆は口々に罵っていた。
「なんという冒涜」
「あんな薄汚い潔白があってたまるか」
「天罰が下るぞ。そうだ、皆がそう思っている」
「誰もがそれを願っている!」
嘘吐きジョンは最後まで真っ白なコートを着ていた。
撃たれ、殴られ、蹴られて転がり、身悶えて夜の地面に転がっていた。
「死んでしまうの、嘘吐きジョン」
私は尋ねた。
「ああ、そうかもね」
「かわいそうに」
「どうして、そう思うんだい?」
「みんながあなたを怖がっていた」
「いやあ、俺はただ嫌われていただけさ。俺は”嘘吐きジョン”だから」
「だったら、そんなコートとっとと脱いでしまえばよかった」
「コートを脱いだって、嘘は吐くよ」
「そうよ。例えばあなたじゃあなくったって、嘘は吐くわ」
そう言うと、嘘吐きジョンは少し泣いて、それからすぐに冷たくなった。彼はその生涯で、真実を口にしたことはほとんどない。
嘘吐きジョンはいつも真っ白なコートを着ていた。
彼が”嘘吐きジョン”と呼ばれはじめてから、今ここで息絶えるまで。
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