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靖子はそう言うと、私の首に小さな鈴の付いたロイヤルブルーの首輪をはめた。
感触的にゴム素材を使ったものだろう。
それは、きっと年寄りの私を気遣ってのことだと分かる。
「ずっと何を贈るか考えていたんだけど、そういえばあんたが首輪をしてなかったのを思い出してな」
……まったく、世の若い娘たちが金持ちのサンタクロースから高額のプレゼントを貰おうとしたり、端麗な雄との交尾を思い描いているというのにお前という奴は……。
どうして私のことなど考えているんだ……。
寂しい……寂しいご主人様だな……。
「なんだよ? そう鳴くなって」
ずっと撫でてもらってなかったせいか、靖子の手が暖かく感じる。
「早く元気になって店に戻って来いよ」
……ああ。
私はまだまだ死ぬわけにはいかないな。
こんな寂しい主人を残して、あの世へ行っている場合ではない。
「おいおい、どうした? そんなに慌てて食べ始めて?」
……うるさい。
私は元気にならなければならんのだ。
黙って舐めさせろ。
それから彼女は、私の体を撫でながら笑みを浮かべて呟く。
「ちょっと早いけど。メリークリスマス、ビアンキ……」
……ああ、メリークリスマスだ、靖子……。
了
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