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すうっと顔を撫でた冷気に、目を開ける。
暗い。
瞬きを繰り返してみる。二度三度……。
ぼやけた視界に映り込んだのは、灯りのない室内。
喉が渇いた、とぼんやり思い、家人に呼びかける。
誰かが顔を出す気配を期待して少し待ってみたものの、家人は誰一人として出てこない。
やれやれ……。どうやら全員寝ているようだ……。
大きく溜息をつき、身を起こす。
布団から抜け出たところで足がもつれた。バタリとその場に倒れる。
聴力や視力だけでなく、とうとう己一人で立つ力も失ったのか……。
「お~いっ。誰かあっ。誰か来てくれえっ」
大声を出してみる。が、人が訪れる気配はない。
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