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ーー甘い、ダージリンの香り……?
「……時間だね」
「え?」
「ほら、罪を償う時間だ」
私の身体は、いつの間にか屋上の柵の外に立っていました。
柵の中へ戻ろうとしても、まるで磔にあっているかのように身体は動きません。
彼は、相変わらず天使のような微笑みを浮かべたまま大きな瞳で私を見つめていました。
「大丈夫、穴に落ちるだけさ。痛みはまったくない」
「ピーター……これは夢、なの?」
「それはどうだろう。夢じゃないといえば夢じゃないし、夢といえば夢だ」
「私は死ぬの?」
「いいや、贖うだけさ」
「……ここから落ちたら、私は許されるの?」
「ああ。もう殴られることも、蹴られることも、犯されることもない。君は君の罪から解放される」
嗚呼、嗚呼。
そうだ、思い出した。
「ピーター……ッ私……」
「時間だ!急がなきゃ!」
ーードンッ。
ピーターの白い腕が、私の背中を勢いよく押しました。
身体はぐらり、と前によろめき、私の身体は深い深い闇の中へと落ちていきました。
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