母のぬくもり

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なんだろう? そう思って引っ張り出してみると木製の立派な箱だった。 表に私の名前が筆記体でかいてある。 どうして私の名前が…? 私はその箱を開けてみることにした。 パカッ 箱の中には小さい頃の私の写真と日記のようなものが入っていた。 日記? 母のものだろうか。 気になったので開けてみることにした。 20××年×月○日 待望の第一子が誕生! 可愛い女の子です。 名前はユリアーナ。 かわいくて元気な子に育ちますように。 20××年○月×日 あの子はすくすくと大きくなりました。 でも、私はあの子をしかってばかり。 生まれてきてくれて嬉しいのに、誉めてあげられない。 男の子だったらっていってしまう。 本当に私はダメだなあ。 20×○年×月×日 今日はあの子がテストで一番をとってきた。 さすが私の子ね!と誉めてあげたかった。 私は何をしているのだろう。 また叱って。 ごめんね、ユリアーナ。凄いわ。 20○×年○月○日 あの事喧嘩をしてしまった。 あの子は悪くないの。 私が男だったらとまた言ってしまったせい。 ごめんね、ユリアーナ。 私はあなたの事を愛しているのに。 20×○年×月○日 私の体調はあまり良くないみたい。 もう死んでしまうでしょう。 死ぬ前にあの子を愛してあげたい。 でも、たぶんできないわ。 私はあの子を前にすると嫌みしか言えなくなるから。 だから、せめてこの中で謝ることにします。 あの子が見つけてくれるかもしれないから。 ユリアーナへ。 あなたを正面から愛してあげられなくてごめんなさい。 ぬくもりを与えられなくてごめんなさい。 本当はあなたが生まれてきてくれて本当によかったと思っているの。 男だったら、男だったらとばかりあなたに嫌みを言ってごめんなさい。 あなたの事を愛しているわ。
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