スプーン鶏の噂

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スプーン鶏の噂

 へえ、あんさん、わざわざあんな噂のこと調べとるんですか。  ははは、あんなんねぇ、子供らがふざけて言っとるだけのもんですよ。まあ、元になった話っちゅうのはあるんですけどね、今子供らが言っとる噂とは全然違う話ですわ。  はあ、それでも聞きたい? あんさん、変わってますなぁ。まあええですけど。言うても、私も親父から聞いただけでね、直接知っとるわけやないんですよ。  あんさん、カラーひよこ言うん聞いたことあります? ピンクとか緑とか、そういうカラフルな色がついたひよこでね、昔は縁日でよう売っとったそうですわ。  いやいや、もちろんひよこがほんまにそんな色なわけありません。絵の具かなんか塗って、色つけとるんですわ。子供騙しっちゃあ子供騙しですわな。でもどうせ縁日で子供らに売るもんですから、子供を騙せりゃそれで良かったんでしょう。  今じゃあ動物愛護だ何だとうるさいんでそんなもんは売られちゃあいませんが、当時のうちの村じゃ、カラフルなひよこは大人気だったそうですわ。  ええ、そん通りですよ。塗ってつけた色なんてそのうち落ちます。だから、カラーひよこもそのうち普通の鶏になるわけですな。まあ、ひよこのうちに死なんかったらですけど。  しかもね、縁日で売っとるようなひよこっていうのは、どれも雄なんですわ。卵産んでくれる雌鶏とちごうて、雄鶏はそんなに要るもんでもないですから、そういうとこで売ってしまうんですな。  雄鶏の何がいけんかってね、卵を産んでくれんのもまあそうですけど、朝早くから大声で鳴くんですよ。まあこのへんだと都会ほどには近所迷惑だなんだってうるさくないですけど、それでも迷惑や思う人はいるもんです。  うちの爺さんが子供ん頃くらいまでは、このあたりも自分とこで鶏シメて食っとった家が多かったらしいんですが、親父ん頃にはもうそんなんできる人もだいぶ少なくなっとったみたいで、鶏がうるさい言うても特にどうすることもできんくて、そのままにしとく家が多かったっちゅう話です。
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