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テーマから大きく逸れてしまった。白か。白、白。
『洗濯物のクールダウン中です』
ああ、もうすぐ止まってしまう。
やはり八分は短過ぎる。
『乾燥が終わりました。洗濯物を取り出してください』
ピーッと止まる合図がすると同時に無機質な声が店内に響き渡った。
白い蛍光灯の下でオレはうんうんとアタマを抱えながら“白”とは何かという事を考えあぐねていた。ふと、雨音が聞こえた気がしてハッと出入り口にあたるガラス戸に目を向けた。外は白い雨が降り注ぎ、その中を白いコートを着て、白い傘を差し、白い長靴を履いた人物が店の前を通り過ぎていくのを見た。
これだ! 求めていたものは!
洗濯物をそのままにオレは店を飛び出してその人がどこへ向かったのか確かめるべく、周囲を見回した。しかしながら、雨など降っておらず、辺りを見回しても全身に白をまとったような人物は見当たらない。
おかしいな。見間違えたのかな。店に戻り、乾燥機の蓋を開けてギョッとした。
二回に分けて乾燥したはずの洗濯物はヒタヒタに濡れており、1回目に確認した時よりも水気をたっぷり含んで重くなっていた。
そして、何より目を見張ったのが、色物のシャツもズボンも下着もタオルも何もかもが
真っ白に染まっていた。
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