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「やあこんにちは」
「 」
「突然だが君を誘拐したよ」
「 」
「なにも言わなくていい、君の口から出る言葉は嘘ばっかりだ」
「 」
「ここで、この純白に染まった部屋で嘘なく一緒に二人で暮らそう」
「ご飯ができたよー、美味しそうだね自分がつくっていうのはなんだけど」
「 」
「そういえば手を縛り付けたままだったね、食べさせてあげるよ」
「 」
「あーん、と、と、と。美味しい?」
「 」
「そうか、舌がないから味がわからないね」
「 」
「まあいいや、僕には君しかいないんだ、ずっと君のお世話をするね」
「 」
「あーあ、こんなに汚して」
「 」
「子供みたいだね」
「 」
「そんな目で見ないでって惚れ直したちゃうだろ」
「 」
「でもまあ悪い子にはお仕置きが必要だ」
「 」
「今日警察が来たよ、こんなに近くにいるのに気がつかないものなんだね」
「 」
「もうここに来てから一ヶ月か、もうすぐ世界が君のことを忘れちゃうだろうね」
「 」
「知ってる?世界で何人が誘拐されてるか」
「 」
「年間八十万人らしいよ、そんな中の君なんてすぐに忘れられてしまうだろうなあ」
「 」
「でも僕は絶対に君のことを忘れない」
「 」
「もう一年もたつね、君と一緒に暮らし始めた日から」
「 」
「君とこの真っ白に塗っていた部屋も汚れてきたよ」
「 」
「君の今座っている場所、そこには悪魔が座っていたんだ」
「 」
「僕を惑わしていた悪魔さ、お陰でたくさんの時間を無駄にしたよ」
「 」
「本当は舌なんて抜いていないんだよ、ただ麻酔で動かなくしていただけ」
「 」
「ねえ何かしゃべってみてよ」
「 ス 」
「す?」
「キス シテ 」
「いいよ」
「 」
キモチ……悪い
「でも、やっぱり君も悪魔だったよ」
そうして男は隠し持っていたナイフで首を切った
薄汚れた白い部屋が真っ赤に染まる
「あーあ、また白く塗りなおなきゃ」
そうして、部屋から出ていった
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