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「櫻井くん、またここに居たのか。」
放課後の屋上。
その水タンクの上にいる少年に、風紀委員の徳田大輝は声をかけた。
「なんだ。また風紀委員様か。ゴクローサマ。」
櫻井、と言われた少年は横たえていた体を起こし、気怠そうにそう言った。
彼は俗に言う不良という奴である。
そして、これが彼等の日常であった。
「全く…櫻井恒星。君って奴は、またこんな所で。暇なら部活なり家庭学習なりしたらどうだ!」
「はー、いつにも増してうるせぇな。」
うんざりした様にして、恒星は下に降りた。
「あ!漫画なんて、校則違反だ!!」
彼の右手に持っていた月刊誌に大輝は素早く反応する。
それもこれも、全ていつもの事である。
「いつもの事だろ???そもそも不良に校則違反だとか、大輝お前頭固すぎか。」
ぽんっ、と身長の低い彼の頭に月刊誌を軽くぶつける。
「ぬ。取り敢えずこれは没収だ。」
反省しない彼の態度が不服な大輝は恒星から本を取ろうと手を伸ばす。
しかしそれは空を切った。
「ははっ!ほらほらぁ!手が届けば煮るなり焼くなりどーぞ?」
「くっ、このっ、ふっ、ぐぐっ」
両手を伸ばし届く筈のないそれに飛び跳ねる彼は、さながら小動物の様に滑稽だった
それを恒星は可笑しそうにおちょくりながら煽る。
「ぬぬっ、全く…………」大輝はとうとう観念した様に呆れた表情を浮かべる。
「ははは!相変わらずチビだなぁ」
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