12裏庭での自覚

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ーーーー 「はぁーあ……。疲れた…。」 裏庭で弁当箱を開けつつ、ため息をつく恒星。 テスト期間が近いからと、最近更に厳しくなる大毅の監視。 それに今までは先生の言っている事などほとんど呪文の様な物で、ただただ眠かっただけだった、ここ最近大毅との勉強会によって、なんとなく、理解できる様になっている。 ただ、その所為でより一層解けない問題が沢山あると言う事実に叩きのめされ、その分ストレスが溜まるのである。 「おっ、今日オムライスじゃん。ラッキー。」 二段の弁当箱の下の段を覗き、自然と笑みが溢れる。 一人でボソボソと呟きながら、恒星は昼ご飯に匙を入れようとした。 すると 「む、櫻井くん。奇遇じゃないか!」 と、遠くから大毅が駆け寄って来る。 恒星は思いっきり顔を顰めた。 「なんでおめぇこんなとこに居るんだよ。」 彼もまた弁当箱を持っており、どうやら食べる場所を探している様だった。 だが、だとすると彼はいつも伊織や同じ委員会などのメンバーと食べている筈。 「いやぁ、たまには伊織にも他の友人達と食事をした方が良い刺激になるかと思ってね。」 その一方的なお節介に、少し残念そうな顔をする伊織の顔が容易に浮かぶ。 最近なんとなく、彼女が大毅を気にかけている事を、恒星は知っていた。 それが恋愛感情なのかはあまり分からないが、きっと伊織は大毅と昼食を取りたかった事だろう。 「君は、いつもこんな所で?」 「そーだよ。ボッチで悪かったな。」 断りも入れず隣に座る大毅に内心溜息をつきながらも、なし崩しに二人で昼食を共にする事になった。 「僕だって、周りに慕ってくれる人やお世話になっている先輩などは居るが、特別仲の良い人なんて限られているぞ?」 恒星と比べ高級感のある弁当箱を開けると、その中は売り物とさえ見間違うほど立派で美味しそうな具材達が敷き詰められている。 「うおっ、美味そうだな。」 さすが金持ち。 そう一言付け加えつつ、色鮮やかに彩られた弁当の中身に目が釘付けになる恒星。 それに対し、大毅の方も恒星の弁当箱の中を見て 「君の弁当も美味しそうじゃないか。母の手作りかい?」 と、お互いに弁当を覗きあう。 北斗の作る弁当は、短時間で低予算ながらも彩りや健康バランスなどを考えて作られた恒星自慢の弁当だ。 「弟が作ってくれてるんだよ。勿論美味しいに決まってんだろ。」
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