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11帰宅路と自問自答
「ゔぅーーーーーーーー…………。」
櫻井恒星少年は、人生の窮地に立たされていた。
それは、自分が同性である徳田大毅に恋心を抱いているかもしれないと言う疑惑のせいだった。
「いやいや……アイツに限ってそんな事……それに男だし…。」
出来る事ならただの思春期の勘違いであって欲しかった。
だが、考えれば考える程恒星の頭は大毅の事でいっぱいになり、それがまた恋の兆候なんじゃないかと、悪循環か完成している。
「終わりだ……。これは完全に終わりだ……。」
男の自分が同性の男の事を好きになるなんて……。
ただでさえ恒星自身の目から見てもその感情は異質なのに、これが知られて仕舞えば、きっと本人どころか周りにいる全員から避けられ、
常に後ろ指をさされ、ナメられ、
ヤンキーとしてもメンツが立たない……。
この時ばかりの恒星は、北斗の様にネガネィブな発想しか思い浮かばなかった。
「さて!放課後だぞ!今日も勉強会をしようじゃないか!!」
「ッッッ!!!!!」
いつの間にか午後の授業が過ぎ、帰りのSHRも終わっていたらしい。
今正に考えていた大毅に突然声をかけられ、大袈裟な程肩が跳ねる。
「……?どうしたんだね?具合でも悪いのか?」
昼休みからやけに大人しくなった恒星に、大毅が心配して顔を覗き込んでくる。
しかし、彼のその優しさも、恒星にとっては更に心臓に負担をかける要素にしかならなかった。
「あぁっ……ちょっと頭痛くてよ……。だから、今日は……先に帰るわ。」
一瞬でも性的に意識した相手と、これ以上至近距離で接していると、心臓と共に
謎の生々しさで精神的にもやられてしまいそうだと危機感を感じた恒星は、
そう弱々しく大毅に断りを入れてから、覚束ない足取りで教室から出る。
「そうか……安静にするんだぞ…。」
その背中を、大毅は少し寂しそうに見送っていたが、今の恒星はそれどころじゃなかった。
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