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有り合わせの具材と最近の料理を鑑みた上で、コンロから流し台の間を忙しなく移動する恒星。
彼自身料理が得意と言うほどでは無いが、嫌いではなかった。
効率の良い手捌きで、だんだんと部屋の中に良い匂いが漂ってくる。
「……はい、コンソメスープとナポリタン、あとサラダ。」
男子高校生が作ったとは思えないとても美味しそうな料理を、テーブルの上に置く。
母はナポリタンに視線を移すと
「えー、口紅塗り直さなきゃじゃーん。」
と、子供のような愚痴を溢しつつも、その目の奥は今すぐに食べたいという心が透けて見えている。
「冷めるだろ、早く食えよ。」
「いっただっきまーす♪」
無邪気に笑って、大きな口でナポリタンを頬張る白星を、これじゃどっちが子供なんだと思いながら、料理道具を洗いに台所へ戻る恒星。
すると、その彼の背中に
「どうしたの?何かあった?」
突然、そう疑問を投げかけられた。
どきり。
帰宅してから今まで、そんな発言はしていなかったはず。
表情だって、台所に立っていたんじゃ後ろ姿で見えないはずだ。
だが、そこは母の勘という奴なのか、それともホストの職業病なのか……。
息子の全てを見透かすようなその言葉に、恒星はやはりこの人には敵わないなと思った。
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