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3校舎裏の夕陽
それから数日後
夕焼け色に染色されていく学校を、恒星は小走りに歩いていた。
「ったく、アイツ何処にいやがんだよ……」
彼は大輝を探していた。
彼から借りた消しゴムを返すためである。
「……。」
こんな事なら柄にも無く授業なんて受けるんじゃなかったと、恒星は後悔した。
最近の恒星は少し様子が変だった。
授業に顔を出すようになったり、
他の生徒の迷惑にならないような場所で喧嘩をする様になり、
大輝の注意は割と素直に聞くようになった。
何よりも、大輝と一緒に居る所を、よく目撃されるようになったのである。
「………ほんと…どーなってんだよ、俺。」
理由は本人にも分からなかったが、
あの日、大輝に助けられて以降、
恒星の頭の中は言い様のない気持ちと、それに対する不信感でぐちゃぐちゃになっていた。
「……あんなうるせー風紀委員会ごときに。情けねぇ。」
今だって、そんな五月蝿い風紀委員会が快く貸してくれた消しゴム一つで、校内を探し回っている。
別に明日にでも返せば良い筈なのに。
そもそも、そんな物返さなければ良いのに。
「クソッ……!」
全部全部、アイツのせい、
アイツさせ居なければ。
青年はそう思った。
だがしかし、
その一方で、もし彼が、自分の事を探し回って消しゴムを返しに来てくれたと知ったら、どんな顔をするのだろうか、と
どれだけ喜んで五月蝿くなるのだろうかと。
そんなふとした好奇心が、恒星を動かしていたのだった。
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