第一章 居合い道

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「うわッ…すっげぇッ!!」  岳は思わず天井を見上げた。めったなことでは驚かない彼が見ている今の光景は床面積だけでも1000畳はあると思われる、巨大な武道場だからだ。その天井の高さにも圧倒された。総檜の巨大な梁が入り組んだ、まさに日本建築最高峰のような道場である。 「なー?驚いただろ?うちの部は理事長から特に目をかけてもらってるからなー。学校の敷地の1/3はうちの武道場が占めてるんだぜ?」  保が得意そうに岳に説明をかって出ている。 「ロッカールームも覗いていくか、岳?」 「え?ああ…」  しばらく道場の広さに圧倒され、立ち尽くしていると、すぐに鉄二に腕を引っ張られた。 「隣にクラブハウスがあるから」  先に二人に先導してもらい、岳はキョロキョロと辺りを見回す。 「一年、神山保、同じく小川鉄二、入りますっ!!」  ドアの前で深呼吸したあと、腹の底から出すような大声で名乗り、二人は扉を開けた。その二人の背について行きながら、岳もひょっこりクラブハウス兼ロッカールームを覗き込んだ。  げっ!!あれは今朝の…  やはりここも豪華な造りのクラブハウスである。道場と同じく特別仕様なのだろう。入り口のタタキ以外は畳が敷かれ、壁の左右にルーバー扉と施錠可能な木製ロッカーが据えられていた。  その真正面に『心・技・体』と力強く書かれた掛け軸を背に、上級生らしき人物が胡坐をかいてこっちを見据えているではないか。しかもそのうちの二人は今朝、同じ車両に乗り合わせた、あの人相がよろしくない…と岳が感じた武闘派の二人だった。
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