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「あァ?ソイツは誰だ?」
岳を見るなり、傷だらけのスキンヘッドの男が訊ねた。今朝、もう一方の男に「剛」と呼ばれていた上級生だ。
「ハイ!あの、白井先輩に入部を誘えって言われて、今日見学に連れてきた…」
自分を紹介してくれる言葉を聞きながら彼らに背を押され、岳はおずおずと前に出た。
「一年の…海東岳です…」
物凄い威圧感を全身に感じた。これはなんと表現したらいいだろう?強いて言えば『痛い』というべきか。
「そうか…新入りか?まぁ…固くなるなよ」
剛の隣にやはり今朝列車の中で見た、大男が座っていた。
「オレは岩田久、こっちの面構えのゴツイのが森山剛、三年だ」
そんな風に言葉を交わしていると、少し離れた場所からこちらに向かって漆黒の着物と袴を召した男が歩いてきた。
ただ左目には大きめなガーゼを当てがい、包帯と眼帯を巻いている。
…え?誰だろう……外国人みたい。
彼を見るなり、岳は目をまるくした。髪は窓を通して差し込む太陽の陽に透け、銀色に光り輝いている。そして着物から伸びた手足はそれこそ透き通るように白かった。
「ふーん、うちの部に入ってくれるのかな?アンタ、可愛いから大歓迎だよー」
「…なんだよ、順也居たのかよ?退院の挨拶も抜きで物陰から立ち聞きなんて相変わらず悪趣味な野郎だな…」
久はその美丈夫を“順也”と呼んだ。
「影山先輩っ!ウッス!!」
「お久しぶりです、先輩っ!!」
彼を見た途端、保と鉄二も直立不動で頭を下げた。
「おはよ、二人とも。彼を連れてきてくれてありがとねー」
順也は二人に近寄ると保と鉄二の頭をヨシヨシ…と撫でていた。岳はあまりにも浮いた雰囲気をもつ彼に少し拍子抜けしてしまった。
これは…体育会系っていうべきなのかな?…それにしても、この順也ってひと…あの武闘派の二人に比べてズレていないか?
彼は冷静にこの部の人物分析を始めていた。
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