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「なんか…まだ部に入るのを迷ってるって顔してるね…」
順也は首をかしげながら岳を見ると、ニコリと笑った。
「…いえ、あの…なんていうか」
「いいんだよ、気にしないで。オレがもし一年なら、いきなりロッカールームで剛と久なんかに出くわしたら絶対入部やめてると思うし…♪」
「…ふんっ!そりゃ悪かったな」
「お前も似たよーなモンだろうよ?」
順也にからかわれ、武闘派二人はムッとした表情を見せた。
「自己紹介が遅れたね。オレの名は、影山順也。居合部の部長なの。
ちょっと左目を怪我しちゃって、入院してたんだけどねー」
順也は少し納まりの悪い逆立った髪を気にしながらにっこりと笑った。
「あ…あの、よろしくお願いします」
「うん…。アンタ、居合いって見るの初めて?」
「あ、はい。テレビとかで見たことがありますけど、実物は未だ…」
「そうなのね、了解。じゃ、ゆっくり見ていってね」
「保と鉄っちゃん…ちょっと…」
と、彼は二人を呼び、岳に練習中の風景や居合いの抜刀道を解る範囲で説明するように、と命じた。
そして自分は厳重に施錠された棚から真剣を一本取り出し、先に道場へと歩いて行った。
「お前、すげーツイてるな?まさか今日影山さんが来るなんて、オレだって思ってなかったのに…」
「だよな…たしか、前に聞いたときはまだ一週間はかかるって言ってなかったか?」
保と鉄二は未だに驚きを隠せず興奮をしているようだった。だが二人が興奮する理由が岳にはよくわからない。
「…なんで、影山さんが居るとツイてるんだ?」
「お前、ホントなーんも知らんのな!?影山順也さんは抜刀道の影山流の第一人者なんだよ?あのひとがうちの部にいるおかげで、最近はインターハイで優勝出来ているようなモンだぜ?」
「へぇ…そうなんだ」
「まぁ…今から見てりゃ、あのひとの凄さが解るさ」
二人に促され、岳はさきほどの武道場へと戻った。
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