第三章 兄貴の花

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 翌日目覚めると、坊はすでに起きていて、布団のうえにぺしゃりと座り込んだ姿勢で、ぼんやりと亮次を見ていた。 「ん……どうした、早いな」  いつもは亮次の腕のなかで目覚める坊だ。亮次は身体を起こし、クセになったように坊の頭に触れると、すぐに違和感を覚えた。 「おい……、おまえ熱があるのか」  亮次の手を頭に乗せたまま、坊は潤んだ目で亮次を見上げる。発熱のせいだろう。顔も微かに赤く火照っていた。 「くそ、なんでもっと早く起こさなかったんだ」  亮次は慌てて体温計を探し、それを坊の脇に挟ませると、パジャマの上から自分の上着を被せて前をしっかりと閉めてやった。  すぐにピピ、と音が鳴って体温計を取り出して見ると、37度8分と出ている。 「マジか……」  亮次はミネラルウォーターを電子レンジで温め、坊に飲ませてから布団に寝かせると、最寄りのコンビニまで走り、レトルトの粥やゼリー飲料、ヨーグルトなどを買って急いで戻った。  坊にゼリーを飲ませながら、仕事を休もうかと考えたが、今日は人が足りないと聞いていた。得意先に車を取りに行って、洗車後にまた届ける予定もある。  少し思案したのち、亮次は美里に電話をかけた。  美里は朝早いにも拘らず、すぐに出てくれた。
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