第六章 優しい訪問者

3/14
前へ
/101ページ
次へ
「ちょっとは食べないと」 「……すまない」  亮次が煮物に箸をつけるのを見守りながら、美里は向かいに座って頬杖をついた。 「もね、か……。可愛い名前だね」 「――」 「睡蓮だね」 「……睡蓮?」  ふと亮次は顔をあげて美里を見た。 「モネと言えば、睡蓮でしょ。有名な絵」  そう教えられて亮次の頭にふと浮かんだのは、坊が描いた絵だ。その中には何枚も睡蓮を描いたものがあったと思い出す。 「どうかしたの?」 「……いや」 「きっとね、……また逢えるよ、必ず」  美里の慰めに、亮次は俯いて小さく笑った。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

229人が本棚に入れています
本棚に追加