第六章 優しい訪問者

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 その男が亮次のアパートを訪れたのは、それから数日後の夜のことだった。  肩書のない名刺を出し、もねさんのことでお話が、というので、亮次は彼を部屋に招き入れた。  嶋田(しまだ)良夫(よしお)と名乗ったその男は、五十がらみの温和な顔立ちをした男だった。   出された茶を前に、嶋田はかすかに目を細めて部屋のなかを見回した。 「ここに、もねさんがいたんですね」 「……あの、あなたは坊、……もねとはどういったご関係ですか。もねがどうかしたんですか」  心配を色濃く滲ませて亮次が尋ねると、嶋田は改めて亮次をまっすぐに見た。 「もねさんは無事です。でも元気がありません」  亮次が顔を曇らせると、嶋田は優しい眼差しで亮次を見つめた。 「私は真治さんから依頼を受けて、もねさんをお預かりしている者です。今日は、少しお話があって、突然すみませんでした」 「よく、ここが判りましたね」 「それは、もねさんの絵が教えてくれたんです」 「絵?」  嶋田は脇に置いていた鞄から書類ホルダーを取り出して、その中に大切そうにしまわれていた紙の束を亮次に差し出した。
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