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「これは……」
坊の絵だとすぐに判った。鉛筆で描かれた、風景写真のように精緻な絵だ。それらはどれも何の変哲もない風景だったが、見覚えがあり過ぎる場所ばかりだった。
川べりの道、神社への道、商店街、曲がり角、公園の池、そして、このアパート。
すべて坊が亮次と散歩したり、一緒に過ごしたりした場所だと判る。
「商店街の名前が描かれていましたし、ここにはほら、」
そう言って嶋田が示したのは、はっきりと町名と地番が書かれた表示板だった。
「マジか……」
坊の記憶力の確かさに驚嘆する。
「もねさんは、とても頭がいいと思います。喋ることは出来ませんが、ちゃんと人のことも、周りのことも見ています」
「はい、それは俺も感じてました」
「私はかつてもねさんの父親、鷹蔵清彦さんの秘書をしていました」
「え、そうなんですか」
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