第六章 優しい訪問者

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「これは……」  坊の絵だとすぐに判った。鉛筆で描かれた、風景写真のように精緻な絵だ。それらはどれも何の変哲もない風景だったが、見覚えがあり過ぎる場所ばかりだった。  川べりの道、神社への道、商店街、曲がり角、公園の池、そして、このアパート。  すべて坊が亮次と散歩したり、一緒に過ごしたりした場所だと判る。 「商店街の名前が描かれていましたし、ここにはほら、」  そう言って嶋田が示したのは、はっきりと町名と地番が書かれた表示板だった。 「マジか……」  坊の記憶力の確かさに驚嘆する。 「もねさんは、とても頭がいいと思います。喋ることは出来ませんが、ちゃんと人のことも、周りのことも見ています」 「はい、それは俺も感じてました」 「私はかつてもねさんの父親、鷹蔵清彦さんの秘書をしていました」 「え、そうなんですか」
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