第六章 優しい訪問者

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「それで、手を繋いで歩いたんですね」 「手を繋ぐ? いえ必要以上の触れ合いは禁じられていましたから、そんなことはしません。そばで注意しながら見ていました。転びかけたりした時などはもちろん支えますが、それ以上は。もねさんもちゃんと歩きますし」  それなら坊は、やはり亮次とだけ手を繋ぎたがったのだと思い、亮次は嬉しさとともにまた坊への愛しさを募らせる。 「でも私がもねさんにしてあげられたのはそのくらいです。……私も結局は、鷹蔵の家の片棒を担いだのと同じなのですから」  嶋田はふいに暗い眼差しになり、テーブルの上に置いた自分の手をじっと見つめた。 「でもあなたは、坊……もねのことを、とても大事に思っておられた」 「え……」 「庭にもねのための、睡蓮の鉢を置いたり、誕生日にはケーキを用意してあげたり。違いますか」 「どうして……、それを」  目を瞠る嶋田に、亮次は微笑んだ。 「もねの絵ですよ。もねはここにいる間、何枚も何枚も絵を描きました。その中にあなたの家で過ごした日々のことも描いていたんです」 「そう、でしたか」 「あなたの気持ちは、きっともねにも伝わっていたと思いますよ」  嶋田はかすかに目を潤ませて俯いた。
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