episode 3 偽りの自分

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episode 3 偽りの自分

初めましての方も、そうでない方もこんにちは~! 3回目にしてついに、あのお悩み相談がきたわよー。 とってもデリケートな問題だから、ちょっと緊張しちゃうわね。 しっかり答えられるように頑張るからね。 『僕はゲイの大学生です。  今まで誰にも カミングアウトしたことはありません。  ずっと自分を偽って生きてきました。  もう疲れました。  でも、誰かに話すことは怖いです。  僕はどうしたらいいのでしょうか?   P.N 桃太郎』 うん。 これはねぇ、マイノリティーの日本人にとって永遠のテーマと言ってもいいかもしれない問題ね。 早く、こんなことで悩まない世の中になってほしいって、当事者の1人として思うけれども。 まずは、桃太郎さん。 相談してくれてありがとう。 たくさん、勇気を出してくれたのよね、きっと。 そもそもね、セクシャルマイノリティーについて、皆の認識はどんな感じなんだろう? “LGBT”って言葉はわりと広まってきてるのかなー? “LGBTQ”ってなると知らない人も案外いるんじゃないかしら? もっと言えば、他にもいろいろ言い方は増えてるみたいなのよね。 あまりにも多様性があるから、私も当事者なんだけれど、知らないことがいっぱいあると思う。 なんかさー、言葉だけが一人歩きしてる気がするのよねー。 こんな人達がいるんだよー! って知ってもらいたい気持ちはあるんだけどさ。 そのためにはわかりやすい表現ってのは必須だと思うけれど。 なんかねー、ちょっとねー。 「マイノリティー=特別な人・変わった人」 みたいなイメージがない? セクシャリティ(性について)のことだけじゃなくてもさ。 まぁね、マイノリティーって“少数派”って意味だから、そうじゃない大多数の人たちからしたら、普通じゃないって思ってしまうのが自然っちゃ自然なんだよねー。 でもなー。 たしかに、目がいきやすいのもわかる。 わかるんだけどさぁ。 その人を形作る、1つの要素でしかないと思うんだよねー。 あれが好き、これが好き。 こんなことは得意だけれど、そっちは苦手。 こういう経験をしてきて、こんな夢がある。 そんなものの中に、同性が好き、とか、外見と心の性が違う、とか、そういうことが含まれてるだけなのよ。 私はそう考えてるから、わざわざ“マイノリティー”って言葉で括るのは違うのになぁって思っちゃう。 「偏見はないですよ」 って言ってるマジョリティー(多数派)の人たちに対して、 そんなこと思ってる時点で偏見の対象として見てるのよ!! なんて言いたくなるのは、さすがにひねくれすぎかしら? マイノリティーの人たちだって、自分で自分のことを、普通じゃない、って思ってない? そう思わざるを得ない世の中なのもたしかだけれどもさ。 自分から壁を作っちゃってる人って結構いると思うんだよねー。 まぁ、私も人のこと言えないけどさ。 オープンにしてるつもりだし、私は私! って信念も持ってるつもりだけど、それでもやっぱり構えてしまうときはあるよ。 偉そうにお悩み相談なんかやっちゃってるけど、私だって悩むこともあるしね。 答えをみつけた! って思っても間違ってたり、新たな悩みが生まれたり、そんなことの繰り返し。 セクシャリティのことだって、最初は自分でも全然受け入れられなくて、桃太郎さんみたいに自分を偽ってたわ。 私がその殻を破れたのは、信頼できる人たちに出会ったおかけだった。 それまでは本当に、世界中の人は皆敵に見えちゃうくらい(すさ)んだ心をしてた気がするなぁ。 人を信じるってすごく難しいことに思えたの。 でもその人たちは、私が作ってた壁をいとも簡単にすり抜けたり、乗り越えたりして私の内側に入ってきて、引っ張り出してくれたんだよね。 そんな人たちに出会えた私はすごくラッキーだと思うわ。 桃太郎さんにも、そんな存在が現れればいいんだけれど、なかなかそうはいかないわよねぇ。 まずね、自分がどうしたいのか整理してみる必要があるんじゃないかな? カミングアウトしたいのか、したくないのか。 偽りの自分と、本当の自分の違いは何なのか。 なぜ本当の自分をさらけ出すのが怖いのか。 諸々考えたうえで、何を望むのか。 こんなところかしら。 そもそもね、カミングアウトってすればいいってものじゃないし、しなくても自然体で生きることは可能なのよ。 偽りとか、素とかっていうのも、セクシャリティに関係なく、おそらくほとんどの人が抱えてると思うしね。 本音と建前とか、オンとオフ、みたいなやつだと思えばいいんじゃないかなぁ? だから、そこにカミングアウトが必要かって言われると、私はNOだと考えてる。 話長くなっちゃって悪いんだけどね。 若い世代を中心にかなり認知は広がってきてるとは思うけれど、やっぱりマスコミの影響で間違った解釈をしてる人ってめちゃくちゃ多いでしょう? 私自身もさぁ、いわゆる“オネェ”ってやつに分類されるわけじゃない。 世間一般の人たちが持ってるであろうイメージに近い性格とか思考とかしてると思うから、私はあんまり気にしないけれども。 “オネェ”の方たち全員が男性を好きだとは限らないし、 “ゲイ”の方たち全員が“オネェ”だとも限らない。 そもそも“トランスジェンダー”の方たち全員が“オネェ”っていうわけじゃないのよ。 もう、差別的用語になりつつあるのかもね……。 と・に・か・く! セクシャリティって、アホみたいに複雑だってことは全然広まってないのよー!! だから、カミングアウトしたとしても、正しく理解してもらえる可能性はほんとに低いと思ってる。 何度も何度も説明して話し合って、ようやくわかってもらえるんじゃないかなぁ。 そんな労力を使ってまでカミングアウトするのか。 しないまま、自分を偽って生きるのか。 それとも「自分は自分だ!」って思って、わざわざ大袈裟にカミングアウトしないのか。 選択肢は他にもあるかもしれない。 カミングアウトしてよかったっていう人もいっぱいいるのは事実だけれどね。 私は、オープンにしているけれども、わざわざ自分から周りに言う必要がないと思ってる。 自分がこうしたい、って思うものがなんなのか、まずはそれを見極めることが大事なんじゃないかなぁ。 もちろん、やりたいことが周りの無理解や無知によって上手くいかないこともあるよ? そんなときは、しっかり傷ついて、ちゃんと落ち込んで、いっぱい泣いたっていいんだから。 疲れたら休めばいいだけよ。 でもしばらくしたら、そこからどうやって進んでいくか、自分で考えて立ち上がらなきゃいけない。 周りのせいにしてるだけじゃ、何も変われないんだよね。 失敗しても、間違ってもいいから、自分が動かないと。 1人じゃ大変なら、誰かに助けてもらえばいいんだし。 身近に頼れる人がいないのなら、ネットでもなんでも上手く利用すればいいのよ。 だからさ、諦めないでね。 お願いだから、早まった真似だけはしないでちょうだい。 セクシャリティに悩んでる人だけじゃなくてよ。 どんなに辛くても、自らの人生を投げ捨てるようなことだけはしちゃいけないんだからね。 残念ながら、その道を選んでしまった人を知ってるからさ。 大丈夫、だなんて無責任なことは言えないけれど、きっとどこかに上手くいく方法が転がってると思うのよ。 これ! といった答えが出せなくてごめんなさいね。 でも、こうやって私に相談してくれたことが、桃太郎さんが一歩踏み出すきっかけになってくれれば嬉しいなぁ。 前に進むだけじゃなくて、横でも斜めでもいいんだし、たまには後ろに下がってもいいのよ。 なんならジャンプしてみたり、地下に潜ってみても視点が変わって発見があるかもしれない。 もちろん現状維持が最適だと思えばそれで間違ってないから。 焦らなくて大丈夫よ。 桃太郎さんが納得のいく答をみつけられるように祈っておくわね。 あら、やだ。 いっぱい喋ったわりにはズバッと解決できなかったじゃないー。 こんな回もあるけれど、これからもついてきてくれるかしら? ではまた次回、お会いしましょう! まったね~ヾ( ・∀・)ノ
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