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三咲の顔を見ると、何だか急にホッとした。
一人でぐるぐる考えて行き詰まっていたので、ちょうど誰かに相談に乗ってほしいと思ってたところだった。
「三咲、良かった…………ちょっと今日、食事に誘われてて……………」
「ははーん……………男だね」
三咲が、興味津々と言った風に、私の顔を除き込んできた。
「ふーん」
三咲はにかっと笑うと
「誕生日に食事とか、それ………本命だよね。良かったー!梓、ここ数年男っ気なかったから心配してたんだよね!そっか、そっかー!」
私のことなのに、自分のことみたいに嬉しそうにしてくれる三咲を見ながら、言うべきか言わざるべきか迷ってしまう。
三咲はあっけらかんとしてるけど、人の嫌がることは絶対に言わない。
意外と口が固いことも知ってる。
「実は付き合い始めた人がいて…………」
そう言うと、三咲は『きゃー』と私の両手を握った。
「誰、誰?私の知ってる人?じゃあデート服で悩んでたんだー」
握った両手をぱたぱたと上下に振りながら、三咲は嬉しそうに笑った。
…………何か三咲に嘘を付くのは心苦しい。
「三咲の知ってる人かも……………」
思わずそう言うと
「凛太郎センセー?」
三咲は迷いなく、真面目な顔で私を見つめた。
「えっ?」
言葉に詰まってしまった。
ビックリした顔をした私に向かって
「だから、凛太郎センセーじゃない?」
もう一度、真面目な顔で聞いてくる。
少し間が開いてしまったけど、パチパチと瞬きすると、私は何度か首を縦に振った。
三咲は、またにかっと笑って
「やっぱりねー」
そうだろうと納得したように、大きく頷いている。
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