エピソード8 愛されるということ

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19時より20分ほど前に到着した。 イタリアンレストランで、内装はアンティーク調。 どこか懐かしく感じる、お洒落で落ち着いた雰囲気のお店だった。 正直、高級そうなレストランを指定されたら、緊張して終始そわそわしていたに違いない。 私の反応も予測していたんだろう、ややカジュアルめでリラックスできるレストランを選んでくれた、凛太郎の心遣いを感じる。 凛太郎は、まだ来ていなかった。 一番奥の、人目に付きにくいテーブルに通された。 いよいよ凛太郎とデートなんだと思うと、やっぱり少し緊張する。 ………気合い入りすぎとか思われないかな? 窓ガラスに写った自分の顔を、もう一度チェックする。 少し前髪を整えていると、携帯の着信音が鳴った。 『悪い。今、病院出た。少し遅れる』 SNSのメッセージが届いた。 時計に目をやり、今出たのなら30分くらいかかるかな……と、ふーと息を吐き出した。 仕事がなかなか終わらなかったんだろう。 看護師でもこういうことはよくあることで、時間に遅れることは、さほど気にならなかった。 『了解です。急がなくていいからね』 返事を返すと、少し緊張が緩んだ。 付き合い始めてから、初めてのデートで誕生日。 どんな会話をしたらいいんだろう………… 最近の凛太郎は、無駄に色気をばら蒔き過ぎて、正直困る。 電話でも赤面してしまうのに、正面に座られて平静を装えるかわからない。 また、窓ガラスを見ながら表情を作る練習をしてみた。
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