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土曜日の19時ともなると、周りの席もほとんど埋まり出していた。
客層も落ち着いてて、変なざわざわ感はない。
カップルや女同士、会社帰りのお洒落なサラリーマンの客が多い。
楽しそうに食事をしている姿は、微笑ましくなる。
しばらく人間ウォッチングをしていると、お店の扉が開き、凛太郎が入ってくるのが見えた。
なぜか、周りの空気が変わったように感じた。
コートをウェイターに渡し、私のいる席を示されると、まっすぐこっちに向かってきた。
黒のタートルネックのニットに黒の細身のズボン、紺色のジャケットを羽織った凛太郎は、芸能人顔負けのオーラを放っている。
周りの女の子のたちも、好奇の目で凛太郎をチラチラ見ているのがわかる。
私が頑張ってお洒落をしても、凛太郎を前にしたら霞んでしまうから悲しくなる。
「梓、ごめん。遅れた」
当然だけど、私の前の席に凛太郎は座った。
周りの視線が痛い気がする…………
「いえ、大丈夫です…………」
また、敬語になってしまった。
凛太郎は急いで来たのか、少し髪の毛が乱れている。
ふと、窓ガラスを見て自分で気づいたのか左手で軽く髪を整えた。
「何か嫌いな食べ物あったっけ?」
私に視線を向けた。
「あっ、何でも大丈夫」
首を横に振ると
「じゃあ、適当に頼むけどいい?」
そう言うと、ウェイターと話しながらメニューを指し示していく。
その一連の動作すら眩しく感じ、思わず凛太郎を見入ってしまう。
…………何でこんな人が、私なんかの恋人なんだろう。
凛太郎が私を好きだと言ったことが、不思議でならない。
幼なじみだし、他の人より免疫があるつもりだったけど、やっぱり普段と違う格好の凛太郎は知らない人みたいで気後れする。
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