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昼からも、キーホルダーの呪いは続いた。
もうここまできたら、占い通り越して呪いで間違いない。
男性看護師の小島隼人から、ケアを一緒に頼まれた。
「櫻井、手空いてたら飯島さんの体一緒に拭いてくれない?」
飯島さんかぁ、苦手だけど、そんなことは当然断る理由にはならない。
「いいよ」
私はやりかけの薬の整理を終え、隼人の後を追った。
飯島さんは、糖尿病を患って、右足の切断を余儀なくされた。
それに関しては可哀想だとも思うけど、正直そこまでほっといた自分にも非があるとも思ってしまう。
68歳で、体重が100㎏を超えた、かなり恰幅の良いおじさん。
厄介なのは今時、男性優位の価値観がやたら強いこと。
案の定。
「小島くん、いつもありがとな。男は力があっていいわ。女はどうも非力でいかん。そんなひよっこくて、俺の体が支えられるんか?」
『じゃあ、痩せろ!』
心の中で叫んだけど、表情はにっこり。
「力がなくてすみません。お体を拭くお手伝いはできるので、できることはさせてくださいね。飯島さんもリハビリがてら、横向くの手伝っていただけると助かります」
下手に出ながらも、協力のお願いは忘れない。
「こんなに足が痛いのに、自分でしろっていうんか?女は怖いな」
必ず嫌みが返ってくる。
無視無視。
いちいち気にしてられない。
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