エピソード3 再会

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なんとか飯島さんの小言をやり過ごし、体を拭き終えた。 ここまでは、不愉快な思いはしたものの、いつもの日常と変わらない。 その次がまずかった。 早々に立ち去りたい気持ちが先に立ってしまったのか、急いでテーブルを元の位置に戻そうと思い動かした時、テーブルの上のポータブルDVDプレーヤーがぐらついた。 ヤバい! 長年の勘で、それが落ちることは予見できた。 でも、間に合わなかった。 サッと伸ばした手の指先には触れたが、大きな音を立て床に落下した。 ガシャーン! 思わず、肩をすくめ、目を閉じた。 すぐに、目を開けDVDプレーヤーを見た。 液晶画面には、クモの巣状にヒビが入り、本体も一部欠けていた。 やってしまった! 事の重大さはすぐにわかる。 「飯島さんすみません!」 考えるより先に深々と頭を下げ、謝罪した。 ほら見たことかと、飯島さんの罵声が飛んだ。 「何だ、さっき注意したことに対する嫌がらせか!?患者のものを粗末に扱った結果だろう!弁償だ!すぐに、弁償しろ!10万はしたんだぞ!!」 カッと頭に血が昇っている大声に、何事かと人が集まる。 隼人も一緒に謝るが、こうなってしまっては、さすがに男女関係ないのか、怒りを沈めることはできなかった。
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