エピソード4 凛太郎の謎

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あの日の翌日、凛太郎は私のところに来ると 「ほら」 と左手を差し出した。 すぐには、何のことかわからず 「何?」 怪訝そうに凛太郎の顔を見た。 「昨日貸したキーホルダー、返す気ないの?」 もう一度ほらっと言うように、左手をクイっと持ち上げた。 確かに借りはしたから返すつもりにはしてたけど、会ってすぐ催促されるとも思わず、鞄の中に入れていた。 「今持ってないから、後でもいいでしょ」 そう言ったところで、噂好きの看護師、後藤美影(ごとうみかげ)に割って入られた。 「なになに?キーホルダーって?」 私と凛太郎が話していることはよくあることだけど、さすがに、キーホルダーを返せのやり取りが、不自然だったんだろう。 興味津々の顔で、私と凛太郎を交互に見た。 ……………まずい人に見つかったな。 と内心思ったけど、そもそも、凛太郎が誰もが見てる前で言わなければいいことだった。
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