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「間宮先生!今日の忘年会、二次会行きますか?」
麗奈が可愛く首を傾げながら、凛太郎の側に近寄って行ったのが見えた。
救急患者の対応を終え、物品の後片付けをしながら、凛太郎と麗奈の姿を横目にとらえた。
凛太郎は、初療室のパソコンで、今しがた使用した点滴のコスト処理をしている。
二次会に誘う気満々の麗奈は、凛太郎のいるデスクの上に両手を着いて、凛太郎の顔を少しだけ覗き込んだ。
柔らかそうな前髪が、ふわっと揺れた。
少しでも長く一緒にいたいという麗奈の気持ちは、恋愛から遠ざかりつつある私にもよくわかる。
凛太郎はカルテの手を止め、麗奈の方を少し振り返った。
「二次会はわからないな。柏木さんは行くの?」
「行くつもりです。間宮先生いると楽しいし、みんなも喜びます。行きませんか?」
麗奈のストレートな誘いに、普段なら何らかの言葉ですぐ反応するのに、珍しく、うーん……と考える仕草でデスクに右肘をつき、顎を乗せた。
ほんの一瞬、チラッとこっちを見た気がした。
「うーん………やっぱり、その時になってみないとわからないな。ごめん……」
と、曖昧に返事をした。
なんだか、珍しく歯切れが悪い。
まだ、可能性はあると判断したのか、麗奈はニコッと笑顔を作り、行けたら行きましょうね、と念押した。
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