故郷、富山へ

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 うん、戦争は終わったんだ。  バタバタした1年があっという間に過ぎて、いろいろと面倒な手続きが済んで、俺は昨日国防軍を退役した。  人類と深海人はまだちゃんと和解した訳じゃ無いし、復興もようやく軌道に乗ってきたばかりだけど、一つの区切りはついたんだと思う。  国は深海軍との条約に則り軍縮。俺の部隊も解散して俺自身は予備役になった。  22歳の時に開戦し、その後10年間ずっと最前線で戦い続けてきたんだが、尊敬に値する上官も、頼りになる先輩も、同じ釜のメシを食った同期も、後から着任してきた才気溢れる後輩も、順番に戦場の露と散っていき……。 「司令官!」  ハッとして、窓の外の景色に向いていた顔と意識を正面にやる。 「おい、司令官じゃなくて司令だからな。それも元な」  対面で目の前のシートに座る彼女に向かって微笑みを浮かべ、なるべく優しく間違いを諭す。  コトンコトンと規則正しく音を立てる鋼鉄のレール。移動速度に対して流れ行く景色の動きはゆっくりだ。  彼女の瞳はキラキラと輝き、好奇心が眼から溢れて零れ落ちてきそうになっている。
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