故郷、富山へ

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「司令官、海だ」 「元司令な、日本海だな」  彼女は暫く水平線をじっと眺めていたが、さしたる興味も無さそうにこちらに向き直った。まあそうだろうな、と俺は苦笑するが次の瞬間に彼女は別の何かに興味惹かれて赤い瞳を輝かせた。 「なんだあれ! スゴイ、何かスゴイナ!」 「ん、あー、アレか……」  彼女の興味は海とは逆の方向へ向くものなのであろう。  それは削られた岩盤が剥き出しになった山肌、自然にそうなったものではなく、明らかに人工的に大きく削られた巨大な山塊であった。  高さにして1000メートルを超える巨大な山が、半ばまで削り取られて岩盤を剥き出しにしたその光景は、只事ではない、さぞかし異様な光景に思うだろう。
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