故郷、富山へ

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「青海黒姫山、標高1221メートル、一等三角点の山だ」 「しかし、何故あの様な?」 「山全体が石灰岩でできていて、露天掘りの採掘場なんだ。石灰はセメントやカルシウムカーバイドの原料になるからな。採掘が始まり、貧しい漁山村でしかなかった糸魚川に繁栄をもたらし、発展させた鉱山だ」 「おお、物知りだな」 「昔登ったからな。性分で登る山の事は調べる」 「む、登る? 山に登るのか? 何のために?」  その瞳には強い好奇心が宿っていた。何かは解らないが、期待で胸を思いっきり膨らませて俺の答えを待っている。  彼女は海で生まれ、海で戦い、生きてきた。その生き方しか知らない。だから、山に登るという行為が珍しく、興味惹かれるものなのかも知れない。
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