7人が本棚に入れています
本棚に追加
「青海黒姫山、標高1221メートル、一等三角点の山だ」
「しかし、何故あの様な?」
「山全体が石灰岩でできていて、露天掘りの採掘場なんだ。石灰はセメントやカルシウムカーバイドの原料になるからな。採掘が始まり、貧しい漁山村でしかなかった糸魚川に繁栄をもたらし、発展させた鉱山だ」
「おお、物知りだな」
「昔登ったからな。性分で登る山の事は調べる」
「む、登る? 山に登るのか? 何のために?」
その瞳には強い好奇心が宿っていた。何かは解らないが、期待で胸を思いっきり膨らませて俺の答えを待っている。
彼女は海で生まれ、海で戦い、生きてきた。その生き方しか知らない。だから、山に登るという行為が珍しく、興味惹かれるものなのかも知れない。
最初のコメントを投稿しよう!