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狂犬は89式小銃の弾丸をばら撒きながら、走り出す。5・56ミリ弾と少女の見えない剣、鉄と鉄とがぶつかり合う摩擦音が鋼鉄のハーモニーを奏でていく。
弾丸をはじきながら徐々に距離を詰める転生騎士。
「ハっ!!ちんちくりんな割にはいい動きだねぇ。」
狂犬は怒鳴りながら、撃ちつくした弾倉を変える。もとい魔術によって、現世へ現れた存在、かつての剣技に加え、魔力効用を得た彼女に、こんな豆鉄砲が効く筈が無い。
あくまで時間稼ぎだ。そう時間稼ぎの・・ふいに腹部に激痛が走る。赤黒い血液がジワリと服を濡らす。いつのまにか距離を詰められたようだ。
すんでのとこで反応できたが、あやうく下からバッサリ持っていかれる所だった。
後ろを振り返るが、敵の姿はどこにも無い。
どうやら相手は遠距離から攻撃ができるようだ。剣が伸びたのか?それとも投げたのか?考えている暇はない。速度を落とさず走り続ける。
途中、何度か背中に激痛が走り、自らの血が飛び散るが、歩みを止めない。
まもなく見渡しのいい川沿いの橋に辿り着く。
素早く89式を構えなおし、敵を探す。前、右、左、後ろ、イヤ、一つだけ見落としている場所がある。狂犬は89式の銃身部を上に揚げ、ダットサイト(照準器)に目を当てる。
星が瞬く夜空を物凄い速さで降下してくる転生騎士の姿がそこにあった。
「見つけたぜィ!!」
叫びながら、セレクターを「連発」の部分にセットする。今89式に詰まっているのは通常の5・56ミリ弾じゃない。
目標に被弾すると弾頭が平らになり最大のダメージを与えるホローポイント弾だ。
剣を振り上げた状態で降りてくる彼女に狙いをつける。(まだだ・・もうちょっと・・)
少女が地面に着いた瞬間。狂犬は引き金を引いた。激しい連射音と共にフルオートで発射された弾丸が相手の体に突き刺さり、体が横にぶれる。狂犬はガッツポーズをとろうとし・・・
全身に無数の斬撃を浴び、体じゅうから血を飛び散らし、その場に崩れ落ちた…
ボロ雑巾みたいになって横たわる狂犬に、転生騎士が静かに近づく。普通の人間なら即死、だが、相手は狂犬だ。何百年も世界と戦い続けてきた異端中の異端者、
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