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不気味な程、静かな町を全身黒ずくめの集団が走り抜ける。暗視装置を付けた頭は辺りを警戒し、手には黒光りするアサルトライフルH&K・G36がしっかり握られている。
彼らは臨時招集をうけた、ある管理機構の特殊作戦群だ。
本来ならこんな極東の島国で活動することは無い。だが、今回ばかりは少し事情が違った。
この日本の小さな港町(確か寒い季節を連想させる名前だった。)にある教会に、
長年保管されてきた「物」が奪われたのだ。奪ったのは“狂気の大隊”と呼ばれる
伝説の異端集団。
管理者たちは、ただちに町全体に結界を張り、事実上の封鎖を施した後で彼らを送りこんだ…
いきなり聞こえてきた砲声に隊員全てが足を止め、警戒態勢に入る。隊長格の男が腕に巻きつけたラップトップを操作し、報告する。
「殉教者より管理者へ、狂気の大隊は発見できず。ですが、まだ市内にいる事は確かです。先程、戦闘中らしい銃撃音を聞きました。我々以外に誰か先行部隊を?」
しばらくの不明瞭な雑音の後、オペレーターには向かないような、甘い女性の声が
ラップトップから流れてくる。
「こちらは、管理局です。恐らくそれは、我々が送り込んだ、代行者です。他にも多数潜入させていますが、貴方達の邪魔はしませんので、そこは、気配りしていただければ幸いです。」
その、どことなくホンワカした声に気後れしつつも返答しようとする彼に、ふいに声がかかる。
「電話はすんだかい。隊長さんよォォォ?」
周りの隊員が一斉に声のした方角に銃を向ける。暗闇の中から一人の男がこちらに歩いてくる。頭にテンガロハットを被り、降下部隊用のフライトコートとトレンチコートを混ぜたような、変わった服を着ている。
「何者だ!?止まれ!!我々は発砲を許可されている。」
そのお決まりのセリフに男はケタケタ笑い出す。
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