知らない夜

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ゲームもやめられる、遊びにも行かない、勉強もする。神様がいて、奇跡が起こるならと思ったところで、当然意味は無かった。  しばらくしてから僕が新しく思ったのは、父と2人きりで生きてくなんて考えられないということ。  正直僕はこの時、死ぬのが父だったならと思っていた。そうであったなら幸せだったと、あの頃の僕は泣きながら、いじけながら何度も父の言葉を遮っては自分の部屋に篭った。  もう、何もかもが、嫌に思えた。学校に行くと、先生が気を使ってくるのがよくわかった。知らないやつが、僕のことを言っている気がした。クラスメイトは、知っているのだろうか。嫌に優しくされているきがした。  学校の中で、僕は徐々に違和感を感じ始めた。そのうち、僕にお母さんに関わる話は禁止。という暗黙のルールまで出来上がっていた。  それから誰も僕に本音で話してくれなくなった気がした。  家にも、居場所がなかった。父は毎日朝ごはんを作ってくれたけど、母のほうが美味しかった。洗濯物をしても、干す時に洗剤の粉がついていたり、ティッシュが大変な事になっていた。お風呂は熱くなったり緩くなったり。母ができていた事が同じ大人の父には何一つ出来ていなかった。  僕はそういう不満を口にこそ出さなかったけれど、きっと、態度に出ていたと思う。  父とは、あれ以降も話らしい話をしていなければ、喧嘩らしい喧嘩もまだしていなかった。僕は、前より笑わなくなったと思う。  けれど出された宿題はやるし、別にやれと言われれば家事だって手伝う。でも何も言ってこないのは、父さんも、きっと死ぬのが僕だったならと思っているから、きっと、僕を嫌っているから、必要と、してないから。僕と、同じように。  そういう毎日を過ごしながら、これからもずっとこのままなんだろうとと思っていた。  小学校を卒業して、そのままエスカレーター式に中学生になったけれど、それから学校には行かなくなった。  あれ以降、僕が生きているこの世界が、この生活が夢のようにふわふわして、いままで見てきた全てが別の物に見えて、怖くなって。引きこもりになった。
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