知らない夜

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この時僕はあまり事を理解はしていなかったが、ただ、父と離れられるのならと思っていた。けれど、現実はやっぱり甘くは無くて、その施設に入ってから二週間程で僕は苛められた。この時になって初めて僕は今までの人生で苛められた事が無かったのだと気づいた。  それも相手は、一つ学年がしたの小学六年生数人に。  彼らは注意する先生に理由を聞かれると、「なんとなく、ムカつくから、気持ち悪いから」といっていた。それから朝の体操も、レクも、おやつの時間も、何もかもに僕は出席しなかった。部屋のドアから覗き込んでくる子にも、トイレで会った子にも冷たくしていた。だから、苛められた。でもこの時は僕の自業自得な所が大きく思える。たった一言挨拶していれば、少しでも誰かと話してみれば、もしかしたら僕の未来は変わっていたかも知れない。僕は勝手に周りばかりを悪くしていたけれど、実際は小学のときも気を使ってくれていただけで苛められていたわけじゃなかった。父も、直接何かを言ってきたわけじゃなかった。  それからも結局苛めは続いた。その時に父に対して僕への嫌がらせでこんなわけも分らない施設に送りつけたと、それなら僕なんか生まなきゃよかったのにと、憎んだ。  死にたいと毎日思っていた。でも死ぬ勇気も無かった。本当は逃げたいだけで、死にたいなんてこれっぽちも思えていなかったのかも知れない。  そして次第に職員とも距離が出来てきた。学校へ行かないならお前は特別部屋だと怒鳴られたりもした。外出禁止だの色々言われたが、もともと外出する気も無かった。こうして、僕の周りに比例して、僕の態度も悪くなっていった。  そんな生活が六ヶ月続いて、園長室に呼ばれた。この時も僕は無感情に職員の視線をやり過ごし奥にあった重いドアを開けた。大人に弱い顔なんて見せないと、よく分らない戦いをしていたから。  小太りの園長が、「座っていいよ」と僕を正面に座らせた。 「何ですか」と悪態をついた。 
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