本当の色

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俺もあんな顔をしているのか。鏡で見て確かめてみたかった。 「兄ちゃんのどこが良かったん?」 「いきなりやな」 「ずっと気になっとったんよ。いつきこうか思いよった」 小夜が前のめりになって、肌がふれあう。こちらを見上げる背後には左右に振れる尻尾が見えるようだった。 「優しいところかな」 「優しい!?」 声が大きい。おばさんが何人かこちらを振り返った。なんとなく触れられたくなくて、どうにか話題を逸らそうとした。 「小夜は、好きな人いたはんの」 少年の、白い首筋を思い出す。小夜のまるい目がみるみる見開かれていく。 「私のことはいいです!」 頬をふくらせて、小夜は立ち上がった。水面が揺れる。そのまま小夜は浴場から出ていってしまった。ふくれたほっぺは子どもみたいなのに、身体はなめらかな曲線を描いていて、不釣り合いな感じがかわいらしいなと思った。小夜の目は丸い。三葉の目は細い。でも笑った時に目がふにゃってなるのは一緒。口元は似ているな。薄い唇、小さな口。兄妹のことを考えながら肩まで湯につかる。しあわせだった。 脱衣所に戻ると小夜はドライヤーで髪を乾かしていて、それが終わるのと俺が服を着終えるのはほぼ同時だった。 「行こ」 「髪、乾かさんの?」     
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