44人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「聴いてくれるん?」
「うん」
しかめっ面をして、慣れない手つきで小夜が弾き始めたのは、シンディ・ローパーのトゥルーカラーズだった。なんでこの曲なんだろう。弾き語りできる曲なんて、この世に数えきれないぐらいあるのに。小夜がこの曲を選んだことに意味なんてないのに。自分の中で、勝手に意味が生まれていく。俺はそれを、涙を、とめることができなかった。
「泣くほど上手かった!?」
「ごめん、ちゃう」
「ええ!?」
「昔、母が流してたんや、この曲」
「もしかして三音さんのお母さん、死んでしもうたん?」
「死んではない」
でもあの頃の母は死んでしまった。
最初のコメントを投稿しよう!