夕暮れを越えて

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二人がほんとうにそう思ってる風にうなずいてくれて、私はとても嬉しかった。鞄を肩にかけて、二人の横を過ぎて、体育館を出た。私は行く。このまま行く。スカートの裾が膝の裏で擦れ、セーラー服の襟は海の風で揺れている。やがて雨が降り始めた。春の雨が街をやわらかく包んでいく。制服に雨が滲みこんで、だんだん重たくなっていく。けれど、もういい。制服を着るのはもう今日で終わりなんだから。私は走った。消えてしまう前に捕まえたい。この気持ちを大切にしてあげたい。そればかり思って、坂道を下っていった。すべてが紗がかかったように白く霞んでいて、海も空も同じ色をしていた。草木の緑は雨水を深く吸い込んで、花が咲くその日を待っているようだった。
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