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「電気、つけへんのか」
部屋に入ってくるなり、三音さんはベッドに埋もれる私を見下ろして言った。
「うん。夜が来るのを待っとるの」
私は星が光るのを待っていた。
「でも今日雨ふっとったけ、星、光らんかも」
思いのほか自分の声はかすれて弱々しく、言いながら、涙がこぼれそうになった。私はなにをしているんだろう。走って帰って、三音さんになにも言えないまま倒れて、お母さんには怒られるし、ばかみたいだ。それに言ったとしたって、気持ちは重なることなんてないのに。
「昼間は晴れとったやろ。それにもう、雨やんだで」
三音さんは椅子を引き寄せて、ベッドの隣に腰掛けた。半分だけ、夕陽に染まっていた。半分オレンジ色で、半分はまっくらだった。前にかがむと、影がうごいて、全部オレンジに染まった。私のおでこに手を添えていった。
「熱、あがってきたんちゃうか。なんで雨降ってるのに帰ってくるんや。迎えにいくのに」
「迎えに来てもらったら、意味なかったけ。私が迎えにいかんといけんかった」
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