本当の色

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目を細めてお茶をすする彼を見つめる。三葉はバカみたいなことを真面目な顔で言う。一方で、他人がぶつけてくる真面目な感情は右から左へするりと受け流す。飄々としている、という表現がいちばん似合う。誰かの怒りや悲しみなんて知らん顔で、いつもへらへら笑っている。そういう態度は、誰も近づけまいとしているからなんだと思っていた。いつ自分がいなくなったっていいように。そして俺だけを近くに置いているのは、きっと――。そのことを考えては、よく悲しい気持ちになった。 けれどそれはただのとり越し苦労で、彼のその性格は親譲りだったということが分かった。自分の足で、行って見てみれば、いとも簡単に分かる。消えてなくなる。たいていの思い悩みはそんなものなのかもしれない。
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